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[今日の一枚]











今日の1枚は、建築家 フランク・ロイド・ライトの設計したリバービュー・
テラスレストラン 「スプリンググリーン」 です。
この建築は、アメリカのウィスコンシン州のウィスコンシン川沿いにあり
、当初の主用途はレストランでしたが、私が行った時、「タリアセン」と呼
ばれているライトが設計した建築群の、ビジターセンターとして使われてい
ました。
さて、ライト建築が好きな方なら、何度でも聞いたことのある「タリアセ
ン」という言葉ですが、これは地名ではありません。
その由来などについて、ライトの写真集「GA TRAVELER002
Taliesin」の解説が詳しいのですが、まずタリアセンとは、ライト
の祖父の生まれ故郷であるイギリス、ウェールズの詩人の名前だそうです。
そして、このウィスコンシン州に建設するライト自身の住宅の名前を、自分
のルーツであるウェールズの詩人の名前から名付けたそうです。そのことを
ライト自身はこう言っています。
「タリアセンとはウェールズの詩人の名だった。ドイルド僧でもあるこの
吟遊詩人はウェールズの芸術の栄光を讃えた。このウェールズ語は字義通り
に言えば<輝く額>という意味である。ウェールズには、この名にまつわる
神話も数多い。」
「リチャード・ホーヴェイの魅力的な仮面劇『タリアセン』によって、歴
史上名高い吟遊詩人のイメージを私は身近なものに感じるようになっていた。
私の親類たちも自分の住まいにウェールズ語の名前をつけているではないか、
私がその例に倣ってもいけないことはあるまい。」
このタリアセン一体の建築群は、広大な自然の中に点在しており、ドライ
ブするだけでも大変気持ちの良い場所でした。
さて、今回のスプリンググリーンですが、ライトらしさを、特に下記の点
で堪能できました。
@ 厚みをある程度均一に、ざっくりとカットした割石の、より石らしい迫
力、存在感。(純粋な組積造だと思われます。日本のこれに近いものは、
99%以上は石風にデザインされたモルタルに着色したものをペタペタ
構造材に張っただけのものです。)
A 構造とデザインとの一体化。具体的にいうと、最初の写真のように登り
梁的な構造材をあえて見せるようにかっこよくデザインしている。(ト
ップライトの役目も兼用しています。)
B 独特の天井高さ。具体的にいうと、まず、エントランス部分の天井の低
さ。(2,100mm程度でした。)谷口吉生さんなどはよくやります
が、日本の公共施設では、一般的にこの低さは非常識です。でも、この
低さがとても心地よかったです。
そして、メインの旧レストラン客席部分は、勾配天井で2,100〜2,
500mm程度でした。これも、日本の常識と比べると低いのですが、一
般的に、勾配があると圧迫感を感じにくくなり、デザイン性も相まって、
気持ちの良い空間でした。
C 適度な光量。具体的にいうと、この建築は基本的にトップライトとウィス
コンシン川に向かって開けられた連続窓からの光で賄われているのですが、
特に連続窓が高さ寸法がおさえてあり、しかも北向きのため、光量が抑え
られています。用途や目的によって最適な光量は違ってきますが、この建
築に関してはそれで正解だったように思います。フランク・ロイド・ライ
トの建築は、どれも光の取り込み方に工夫したものが多く、その辺の建築
家の意志を強く感じ、いつもとても勉強になります。
今回のフランク・ロイド・ライト建築も、大変見応えがありました。
場所 :アメリカ ウィスコンシン州スプリンググリーン
作品名 :リバービュー・テラスレストラン「スプリンググリーン」
(1953年)
建築家 :フランク・ロイド・ライト
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