
天井高さについての小話を二つほど。
<小話その1>
昔、建築巡りの目的で鎌倉に行った際、とある旅館のたった3帖しかない離れの部屋に宿泊させて頂いたことがあります。その部屋はベッドとテレビと、荷物を置く少々のスペースのみという狭小空間でした。低い勾配天井で、味のある木質空間だったのですが、これがとても落ち着く空間で気持ちよく眠れたのを今でもよく覚えています。穴倉に潜るような、又は、胎内回帰のような感覚でしょうか。
<小話その2>
大学時代に、アメリカのシカゴにあるロビー邸という名建築を見学したことがあります。ちなみにロビー邸は犬山に移築された帝国ホテルを設計した巨匠フランク・ロイド・ライトが設計した住宅です。このロビー邸は色々なところで影響を受けたのですが、その一つが低い天井高です。廊下などは2.1m程度と思われ、居間も2.4m程度だったと思います。とにかくなんとも快適だったのです。異なる天井高のコンビネーションによる効果、この天井高が空間に与える影響を、そして、快適な天井高さについて、その後の設計人生で色々思索するようになりました。
天井高をいくつにするのか、それは建築家が留意する重要ポイントの一つです。クレームを恐れるハウスメーカーさんや工務店さんは一律で2.5m以上の天井高にしたりもしますが、一律に高すぎる天井高さはクレームは来ないでしょうが、落ち着く空間にはなかなかなりません。逆に、高すぎない天井と低い天井を上手に組み合わせることによって空間の魅力が増し、居心地をよくすることができます。これは、いくつもの実体験を元に考えを深められたから言えることなのだと思います。
居心地のよさ、それは機能ではなく感覚的なものなので、説明が大変難しいです。素材の質感によっても居心地がよくでき、日当たりや風の流れによっても居心地がよくできます。それと同時に、天井高によっても居心地をよくすることもできます。この説明が困難なわかりづらいことを追求することが、建築家の醍醐味の一つと言えるかもしれません。
永井政光建築設計事務所 公式HP → https://www.nagai-architects.net/
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