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[今日の一枚]



今日の一枚は、ロンドンの国会議事堂の隣にある ウェストミンスター寺院 です。
この建築は、イギリス中世の大規模なゴシック建築です。11世紀にエドワード懺悔王が建設し、1066年以降、英国国王の戴冠式が行われています。1245年に、ヘンリー3世が再建を決め、フランスの建築家を招き、フランスのゴシック建築にならって現在の寺院を建て始めました。14世紀末までにおおよそ完成しますが、正面部分は16世紀初め、塔は17世紀、と長期間にわたって建設されています。(1987年、ユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録。)
各界のイギリスの著名人が埋葬されています。
美しい彫刻が施され、一つ一つに宗教的な意味があるだけでなく、造形美としても、その彫刻が効果的な陰影をつくっています。
特に2枚目の写真の彫刻は、かなり細かく丁寧に彫られており、いかに多くの職人さんが、膨大な時間と労力を注いで造ったか、実際に造っているところを見たわけではないのに、その得体の知れない迫力のようなものを感じます。
ゴシック建築は、12世紀後半から花開いたフランスを発祥とする建築様式で、イギリス、北部および中部イタリア、ドイツのライン川流域、ポーランドのバルト海沿岸およびヴィスワ川などの大河川流域にわたる広範囲に伝播しました。
「ゴシック」という呼称はもともと蔑称で、15世紀から16世紀にかけて、アントニオ・フィラレーテやジョルジョ・ヴァザーリらが、ルネサンス前の中世の芸術を粗野で野蛮なものとみなすために「ドイツ風の」あるいは「ゴート風の」と呼んだことに由来する(ゴート族の建築様式というわけではない)そうです。
18世紀になると、主として構造力学的観点から、合理的な構造であるとする再評価が始まり、18世紀から19世紀のゴシック・リヴァイヴァルの際には、ゲーテ、フランソワ=ルネ・ド・シャトーブリアン、フリードリヒ・シュレーゲルらによって、内部空間はヨーロッパの黒い森のイメージに例えられて賞賛されました。
私は、この巨大で細部までつくり込まれた迫力や、静謐な内部空間や、構造原理の明快さなど、実際にゴシック建築を観るたびに感情を大きく揺さぶられます。
改めて、建築の可能性や、膨大な時間をかけて、何か大きなもの・ことのためにつくり上げていくことの歴史的、文化的意義みたいなものを考えます。
今後の日本建築のあり方や可能性についても探ってみたくなります。
場所 :20 Deans Yard, London SW1P 3PA イギリス
作品名 :ウェストミンスター寺院(11世紀)
建築様式:ゴシック建築
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